「歯科特殊健診」ってご存じですか?
「歯科特殊健診」とは、特定の職場環境で働く人々が口腔の健康を維持するために行う特別な歯科健診のことです。
川崎市歯科医師会 産業歯科保健部委員会は、令和4年10月の労働安全衛生法第66条第3項改正に伴い、歯科特殊健診に関する問い合わせの増加を見込み、準備を進めてきました。
まず、川崎市歯科医師会会員への周知として、事業所からの問い合わせ対応方法を案内し、産業歯科保健委員会では歯科特殊健診に関する研修を開始しました。この過程で日本産業衛生学会にも入会し、委員全員が同じ講演を受講、意見交換を行うことで理解を深めています。
こうした基礎づくりを経て、同委員会は歯科特殊健診の体系的な制度設計に着手しまし、他県の歯科医師会の事例を参考にしながら、川崎市における歯科特殊健診の手引きを完成させました。現在は、同委員会所属診療所での健診体制と、複数社に対応するための出向体制を整え、健診活動を実施しています。
強酸を扱う現場では「歯牙酸蝕症(さんしょくしょう)」という病気のリスクが高くなります。これは、強い酸によって歯の表面(エナメル質)が溶けてしまう病気で、知覚過敏(冷たいものや熱いものがしみる)、歯の変色、歯がもろくなるといった症状が現れます。放置すると、食べ物をうまく噛めなくなったりすることもあります。
このため、被健診者(検診を受ける人)の歯の変化を定期的に確認するため、前歯の写真撮影を必須とし、委員会内で診断基準の研修も行っています。
事業所における酸蝕症を防ぐためには、以下の対策が有効です。
職場環境の管理: 酸蝕症を防ぐためには、職場環境を適切に管理することが重要です。
個人防護具の着用: 強酸を扱う現場では、個人防護具を着用することが必要です。
定期的な歯科健診: 定期的な歯科健診を通じて、歯の変化を早期に発見し、予防することが重要です。
口腔衛生の維持: 歯や口の健康管理を徹底し、口腔衛生の維持に努めることが求められます。
教育と研修: 事業所での教育や研修を通じて、労働者の口腔衛生に対する意識を高め、適切な対策を講じることが重要です。
おわりに
これらの取り組みにより、酸蝕症の予防と労働者の口腔健康維持が可能となります。川崎市歯科医師会会員と協力して、この活動をさらに広げていくことを目指しています。
公益社団法人 川崎市歯科医師会 産業歯科保健部